最後の恋の始め方
 「というわけで。僕が他の女に過度に親しくするのは、あくまで写真のためだから。公私のけじめはきちんと付けているつもりだ。だから理恵も……、他の男に誘われるがまに、ついていったらだめだよ」


 そう言い終えた直後、そっと理恵の唇に触れた。


 「はぐらかさないでください」


 結局のところ、キスではぐらかそうとしている僕の企みを、理恵は見抜き拒絶する。


 「第一私、他の人についていくなんて……。考えたこともありません」


 「このままだったら遅かれ早かれ、あの男は理恵にモーション掛けてくるよ」


 「まさかそんな……。山室さんは私にとっても大学の先輩で、佑典の無二の親友。私のことは、妹分として見守ってくれているだけのはず。それに万が一、私と何かあったとしたら……。先輩もまた佑典を裏切ることになるのですから。そんなひどいことは、」


 「そんなひどいことをするのは、僕しかいないってこと?」


 「いえ、そういう意味では」


 見つめられているわけでもないのに、つい目を伏せてしまった。


 「本気になったら、モラルとか社会的地位とか、一瞬どうでもよくなったりするんだよ。欲しいと願った女を手に入れるためならば」


 「どうしてそんなこと、言い切れるんですか」


 「分かるからだよ。あいつのこれからの出方が。同じ男として」


 ……山室さんは、あなたとは違う。


 理恵はきっと、こう答えようとしただろう。
< 111 / 162 >

この作品をシェア

pagetop