最後の恋の始め方
***


 「あの若造、佑典のことあれこれ聞いてきたよ」


 「!」


 あの男が佑典のことを詮索してきたと、理恵の耳元で告げると。


 理恵の体は、焦ったのかぴくっと震えた。


 「動揺してるね」


 理恵を腕の中に抱きながら、僕は余裕の笑みを浮かべる。


 「別に……。いきなり関係ない話題を振られたからです」


 強がっても無駄なのに理恵は平気なふりをする。


 ……この夜の僕は、久しぶりに早い時間から在宅。


 自宅で理恵と夕食をとり、その後一緒にテレビを見ていた。


 いつもなら外食をすることが多いのだけど、今日は久しぶりに家で二人のんびりしようって話になった。


 一緒にすき焼きを食べた後、居間でテレビ観賞。


 僕の好きな自然番組を二人で見ていた。


 「ジャングルにも撮影に行ってみたいな」


 「予防接種とかきちんとしてから行かないと、マラリアとかの危険性もありますよ」


 そんな話をしながら、番組を楽しんでいた時。


 僕の中の意地悪な部分が膨張し、理恵を困らせるような話題を振る。
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