最後の恋の始め方
 「私……」


 「在学中からかわいいと思っていた。だけど理恵ちゃんには佑典がいたし、第一俺にも彼女がいたから、付き合いたいとかそんな気持ちではなかった」


 戸惑い言葉を失う私とは対照的に、山室さんは想いを私に伝え続ける。


 「一緒に、新たな人生を歩んでいかないか」


 ……二人の間に沈黙が走る。


 店内のざわめきが空しく響く。


 どうしよう。


 山室さんにそこまで言われてしまった。


 今後も仲良く接していくには、曖昧な態度に終始してこの場を乗り切れば。


 ……だけどそれじゃ、繰り返すだけ。


 佑典を傷つけたように、このままでは山室さんまでも。


 「ごめんなさい」


 拒絶するしかなかった。


 ずっと山室さんとは、よき先輩後輩の仲でいたかった。


 でも山室さんの気持ちを聞いてしまった以上……もう無理。


 今までと同じようにはいかない。


 気まずくなること覚悟の上で、交際はお断りした。
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