最後の恋の始め方
 「待って、理恵ちゃん」


 突然立ち上がり帰ろうとした私を、山室さんは引きとめた。


 「まだ話は終わってないよ」


 交際はとりあえずお断りし終えたのだから、このまま立ち去ってしまいたかった。


 「俺に言わせるだけ言わせておいて、さっさと逃げるなんて……卑怯だよ」


 山室さんの強いまなざしに見つめられてしまうと、逃げることができなくなった。


 「もうちょっと話をしたいんだけど、」


 その時、ウェイターが私たちのテーブルを訪れ、そろそろお時間ですと告げられた。


 あっという間に二時間が経過していた。
 

 ……食べるだけ食べておいて一方的に逃げ出すとは、食い逃げみたいでさすがに気が引けたので、山室さんが会計している間待っていた。


 貸し借りを残したくなかったので、自分の分だけでも負担しようと思ったけど、当然のことながら却下された。


 「ちょっと話をしないか」


 レストランを出た瞬間、山室さんに提案された。


 ここはホテルの最上階。


 部屋に移動しないかと誘われたらどうしようかと心配したところ……。
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