最後の恋の始め方
 「でもぶつけられたのだから、その衝撃で」


 「確認してきたら、ちょっと塗料がはがれた程度だったよ。念のため明日、ディーラーの所へ行って、見てもらう予定だけど」


 「和仁さんも、病院で診てもらったほうが」


 「時速5キロも出ていなかったから、行くほどじゃないよ。それより悪かったね。車検証置きっ放しにしていて。だから警察から電話行ったんだよね」


 「どうしていつも積みっ放しの車検証を、外に出してしまったのですか」


 「カタログ見てたら、車買い替えたくなってね。今の車はいつ買ったか分からなくなったから、車検証で確認してそのままリビングに」


 「そうだったんですか」


 「というわけで、話題を変えるけど」


 そう言いかけて和仁さんは、くるっとこっちを振り向いた。


 「さっきの男は何?」


 表情と顔色が変わった。


 「さっきって。山室さんのことですか」


 「そう。あの銀行員」


 先刻自己紹介は済ませているはずなのに、なぜ改めて尋ねてくるのだろうかと思った。


 「さっきも紹介していた通り、山室さんは佑典とは同期で、二人は非常に仲良くしていて……」


 「佑典との関係じゃなくて。理恵との」
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