最後の恋の始め方
 「変なこと言わないでください。山室さんは大学時代の先輩、それ以上でもそれ以下でもありません」


 「あいつ、理恵に好意を持っている」


 「は?」


 呆気に取られて、私は和仁さんを見つめ返した。


 「山室さんが、私に?」


 和仁さんは黙って背広の上着を脱いで、椅子の背もたれに掛けた。


 「まさか。佑典とお付き合いしていた頃、山室さんは私に妹みたいに接してくれて。だから今でもその頃の延長線上で」


 「二人の間に立ちはだかっていた、佑典という存在がなくなった今、当時とは状況が違うんじゃないのかな」


 「え……」


 「あいつは理恵を狙ってる」


 「やめてください。山室さんはそんな人じゃありません」


 「そんな人、ってどういう人?」


 「……」


 答えに窮した。


 「先輩はそんな人じゃない、か。そんな人。つまり僕みたいに、本性を隠さないで欲しいものは手に入れようとする人」


 「和仁さん……」


 「だけど男なんて、みんな一緒だよ。獲物を手に入れるためにいかなる演技も可能だし、どんな仮面だってかぶれる」
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