最後の恋の始め方
 「僕が大学出る頃は、卒業旅行は海外が当たり前だったよ」


 「皆さんバイトに励んでいたんですか?」


 理恵にはイマイチピンと来ないようだけど……その頃日本はまだバブルの頃。


 景気がよかったため学生もたくさんお金を持っていて、当たり前に海外旅行を楽しんでいた。


 「バイトだけじゃないんだ。就職活動をすればお金がたまって、海外旅行の資金に回せたんだ」


 「就職活動で?」


 理恵はますます意味が解らない様子。


 順を追って説明すると……当時は就職活動で試験を受けに行くと、交通費が支給された。


 誰もが十社とかから内定をもらえて当然の時代だったから、その分交通費が支給される。


 試験の時期が重なれば、一社分の交通費を実際に消費するだけで済み。


 残りの分は自分のものにすることができて、それを卒業旅行の資金にしたりした。


 「……信じられません」


 理恵は驚き呆れて、ため息をついた。


 「みんなが浪費ばっかりしたから、日本は不景気になったんじゃないでしょうか」


 「そういう時代だったんだよ」


 僕は理恵を膝の上に座らせ、パソコンの中のエジプトへと話題を転換させた。
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