最後の恋の始め方
 「理恵ちゃんはどうして、水無月和仁氏のところで働くの?」


 「それは……。私が就職が決まらないのを、先生が見るに見かねたのがきっかけで」


 完全に別れたわけではないとはいえ、距離を置いている彼氏の実の父親の元で働くと知って、驚かない人は少ない。


 「だけど佑典とは、以前のように付き合っているわけでもないのに」


 「佑典と付き合っている頃から、先生には親切に接していただいていたので、その延長線上で」


 まだ山室さんには真実を知られたくないので、言葉を選んだ。


 「それだけの理由で水無月氏の元に就職して、いつも一緒に……?」


 「……」


 「俺は、心配だな」


 「心配? どういうことでしょうか」


 山室さんの次の言葉を予想すると、緊張が高まる。


 「別れたも同然の彼氏の父親の元に勤務。しかもその父親は、父親とは思えないほどの容色を保った、物の怪のような存在」


 「物の怪って、そんな……」


 思わず苦笑してしまった。


 「俺が理恵ちゃんの保護者だったら、やめてほしいって願うな」


 「えっ、どうしてですかか」


 「あの人は何ていうか……。危険な香りがする」
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