波音の回廊
 このお堂は、海の神を祀る場所。


 水城島と水城家の守り神だ。


 「あなたが本当に神ならば」


 清廉は願った。


 (私の無実を晴らしてほしい。邪悪な連中を打ち滅ぼしてほしい。そして……)


 灯りもなく暗いお堂の中で、清廉は祭壇の海の神の像も見上げた。


 (瑠璃だけは助けなくては……)


 清廉は拳を握り締めた。


 水城家の屋敷内で人間たちが揉めている間にも、空には変わることなくほうき星が横たわり続けており。


 波音が繰り返し響き渡っていた。
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