波音の回廊
 同時刻。


 清廉もまた、お堂の窓から南の空を眺めていた。


 南の空に横たわる、不吉とされるほうき星。


 「あんなの7~80年に一度という周期で頻繁に現れるだけの、ただの天体」


 と笑い飛ばし、


 不吉のしるしと怯える人たちを、内心あざ笑っていた。


 だけど今。


 (あれもあながち、間違いではなかったのかも)


 清廉はそう思い始めていた。


 次々身の回りで起こる、不吉な出来事。


 周りは敵ばかりになった。


 (瑠璃とも離れ離れに……。早く取り戻して抱きしめたい。濡れ衣は一刻も早く晴らしたいけれど、不用意な言動が瑠璃までも追い詰めてしまう可能性がある)


 清廉はためらっていた。


 (父上に無実を訴えようにも、肝心の父上は意識不明の重態と聞く)


 真実を確かめたかった。


 (父上どうかご無事で。毒を盛られたなど……、七重がやったに決まっているのに!)
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