波音の回廊
 「あんた、早く起きなさい」


 食事を急かされているのかと思いきや、どうやら違ったらしい。


 連れて来られた若い娘が、私の前で着ている物を脱ぎ始めた。


 「……?」


 「急いでこの子の服に、着替えなさい」


 「えっ」


 「ここから脱出するんだよ」


 「どうやってですか。周囲は衛兵に囲まれ、監視されています」


 私は混乱していた。


 逃げるってどこへ?


 清廉は?


 「私たちは、じいに頼まれたんだよ。この子は、じいのお孫さん。あんたと背格好似ているから、ちょっとの間身代わりになるんだよ」


 「身代わり!?」


 私は驚いた。


 じいの孫という少女は私よりもちょっと若い感じなものの、身長が私と同じくらい。


 見た目も何となく似ている。
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