波音の回廊
 「でも……。そんなことして発覚したら、お孫さんに危害が加わるかも」


 「大丈夫。私は武道は鍛えられているから」


 少女はにこっと笑った。


 「いざとなれば、屋根を越えて逃げることだってできるし」


 「さあ、急いで着替えて」


 私は急かされるままに、じいのお孫さんと着物を交換した。


 「衛兵がいなくなるまで、顔を上げちゃだめだよ。とりあえずじいの館に移動して、それから対策を練るから」


 「清廉は?」


 「今日から取り調べかしらね。まだ殿は意識がお戻りにならないし」


 「助けることはできないのでしょうか?」


 「今の段階で脱走でもしたら、逆に罪を認めたとみなされそうだしね……。おとなしくしてれば、次期当主である若様に、誰も危害は加えないと思うけど」


 「……」
< 158 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop