波音の回廊
Rebellion
 (昼なのに、なんて暗い……)


 清廉はお堂の小さな窓から、四角い空を見上げていた。


 この角度からは、東の空から不気味に昇り始めたほうき星は見えないものの。


 薄暗い空と生暖かい風。


 何もかもが不吉だった。


 (本気を出せば、堂の壁を破ってでも逃げ出してみせるのだけど)


 自分が逃亡することによって、私に害が及ぶことを恐れ、清廉はお堂に留まり続けた。


 「何とか瑠璃を連れて逃れることができたなら……」


 船で島から抜け出そうとも、清廉は思い描いていた。


 だけど清廉は、島から外に出たことがない。


 海の向こうの世界を知らない。


 この島を抜け出したところで、彼に生きる場所などない。 
< 171 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop