波音の回廊
 私は、ゆっくりと一つ一つ説明した。


 清廉を混乱させないように。


 まず私が、約550年後の世界からやって来た人間であると。


 その世界では、水城島に大津波が訪れたことが伝承として伝わっている、と……。


 「550年後、か……」


 予想したよりかなりすんなりと、清廉は私の話したことを理解してくれた。


 「人生50年、とはよく言われる。550年といえば、その11倍ものはるか未来だな。そんな遠い未来からここに誘われたとは、やはり海の神のおぼしめしだろう」


 清廉はそう理由付けて、納得したようだ。


 「その頃の日本は、何という帝の治世なんだろう。幕府は……」


 「幕府なんて、とっくに存在しないの。天皇家は、今の帝の遠い遠い子孫が存続しているけど……」
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