波音の回廊
 日本近郊で起きた地震に対してならばまだしも。


 遠い場所で起きた地震が引き起こす津波に対する危険度の認識が、当時の日本は甘かったらしい。


 その後広範囲な地震発生時に、津波発生状況を確認して連絡しあうシステムが確立されたようだ。


 ただしそれは、たった50年前のこと。


 昔の人だったら突然目の前に現れた津波に対し、なす術がなかっただろう。


 地球の裏側なんて、存在すら知らなかったんだし。


 そこで地震が発生して、津波がこちらに向かっているなんて、知る由もない。


 被害を受けてからはじめて、あれは神の呪いだったんだと結論付けるしか。


 「……」


 私は、一つの仮説を導き出した。


 水城島に押し寄せた津波は、このようなものだったのではないかと。
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