波音の回廊
 ……だけど、やはり疑問が残る。


 太平洋上に浮かんでいた水城島が、本州や北海道よりもいち早く、津波の直撃を受けるのは理解できるとして。


 なぜそこで、津波は止まってしまったのか。


 島を壊滅させても、まだ津波のエネルギーは潰えないまま、本州を直撃はしなかったのか。


 記録は何もない。


 津波の勢力は、水城島を葬り去ったと同時に消えてしまったとしか思えない。


 水城島を直撃するために、津波は神によって送り込まれたの?


 清廉が命を捧げることによって、海の神の怒りは鎮まったの……?


 清廉が庇った裏山に逃れた人々と、船で島を脱出した人たちのその後は?


 今はまだ、そこまでは解らない。


 もしかしたら、永遠の謎のまま残されるかもしれない。
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