Sweet Lover
真っ赤になっている私を見て、響哉さんは顔色一つ変えず、甘い笑みを浮かべる。

「それで、まだ、キスは怖い?」

ほんの数時間で治るようなものじゃ、ないと思うんですけど。

こくこくと頷く私に、無遠慮に顔を近づけてくる。

うわぁああっ。

逃げようとしたけれど、いつの間にか、頭を抱き寄せられていて微動だにできない。

「いやいやいやっ」

怖い。
……やっ。
心臓にきゅんとした、痛みが走る。

体が硬直し、涙が滲む。

響哉さんは、直前で方向を変え、私の頬にキスをした。

「……意地悪っ」

今にも泣き出しそうな私を、その広い胸に抱き寄せた。
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