Sweet Lover
「その話が、マーサを辛くしないって言うんだったら……いくらでも話すけど」

響哉さんは、私と再会したことで、私の記憶を呼び覚ましたことをひどく後悔している。

「キョー兄ちゃんが傍に居てくれるんだったら、平気だよ」

目を見て言うのは恥ずかしいので、視線をフローリングに落としてそう言った。

響哉さんの唇が、頭に触れる。

そのままぎゅうと抱きしめられた。
心地良さに、心臓がことりと高鳴る。

「学校、サボって俺と一緒に居る?」

「……え?」

私が顔をあげて、響哉さんの蕩けそうな笑顔を見たのと、呼び鈴が鳴ったのはほぼ同時だった。

響哉さんはくしゃりと私の頭を撫でて、インターホンを押す。

「やっぱりマーサ、学校サボらせる」

「……ふっざけんなよ、お前っ。俺をここまで寄越して何言い出す。
 いいか?マスコミにあることないことぶちまけられたくなかったら、今すぐ真朝ちゃんを下によこせっ」

インターホンの向こうから、佐伯先生の怒鳴り声が聞こえてきた。
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