Sweet Lover
先生を見送った後、私はどうして良いか分からなくて、とん、と、頭を響哉さんの胸に押し付けた。

「カレンさんとペギーちゃん、どうしたの?」

「春花に送らせた。

 というか、正直マーサの不在に気づいたら、いてもたってもいられなくなって、他のことなんて記憶にない」

――それって。
カレンさん、またここに押しかけてくるんじゃないの?

「でも、このマンションの存在はカレンに知られることはないよ。

 それに、多分。
 これだけ取り乱した俺を、初めて見て何か察したんじゃないかな」

「――ごめんなさい」

「謝る必要なんてないって言ってるだろ?
 こうして、無事に元気で帰ってきてくれたら、それでもう十分」

響哉さんはくしゃりと私の髪を撫でてから続けた。

「もしかして、マーサ。
 俺に父親代わりになって欲しい?
 もし、それがマーサの望みなら、結婚は諦めて、父親になるよ――」

冗談や気まぐれとは思えない、真摯な言葉に私は息を呑む。

「それが、マーサの望みなら、俺が叶えてあげる」

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