Sweet Lover
でも、それは冗談なんかじゃないのかも……。

「もしかして、私がここに居るから看護教諭をやるようにって、響哉さんに命じられて……?」

「お、鋭いねぇ」

なんでもないことのように、先生はにこりと笑いながら車を発進させる。

「……そんな、だって。
 本当はお医者さんなんですよね?」

信じられない。
先生は、自分のキャリアを棒に振って、そんな資格をとって、今、ここに居るって言うの?

響哉さんの命令で、私の為に――?


「まぁね。
 うちは代々医者だし、さ。
 ただ、俺には二人兄貴が居て、二人とも医者だし。
 俺が数年間須藤家のために動いたって、困らないからね」

「でもっ」

私は声をあげる。

大事なのは『家』じゃなくて、先生自身の生き方なんじゃないの……?
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