Sweet Lover
パパとママの写真を見るたびに、それが誰かということも認識できぬままに私が号泣するので、家にもパパとママの遺影は飾ってなかった。

啓二おじさんに頼んで、見せてもらおうかな――。

私はそんなことを考える。
ふと、顔をあげて時計を見たらもう、時間は三時を過ぎていた。

「よっぽど集中してたのね」

思わず、ひとりごちて苦笑する。

それから、久々に実家に電話をかけた。

出てきたのは弟のコウスケで、

「姉貴、もう、ここに戻ってこないつもりかと思ってた」

と、開口一番、照れを隠すためか、やたらとぶっきらぼうに聞いてきた。

「な、何言ってんのよ」

私は慌てて軽口を返す。
コウスケは、何を何処まで知っているのか、――よく分からないので、曖昧な言葉しか言えなかったけれど。

「だったらいいんだけどさ。なんか、父さんと母さんも口には出さなくても心配してるんだぜ――。
 大丈夫なのかよ、スドウってヤツ。
 ま、とにかく、たまにはこっちにも顔出してよね。
 で、何?」

「お父さん、居る?」

「ああ。ちょっと待って」
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