Sweet Lover
「真朝、どうした?
 元気でやってるか?」

心配する声は、父親のもの。

「大丈夫。私はいたって元気よ。
 あのね――」

――パパの写真、ある?

そんな簡単な一言が言えなくて口篭ってしまう。

今までは、本当の両親の記憶がほとんどかすみのようなものだったから、何も思わなかったけれど――。

育ててくれたお父さんを目の前に「パパの写真」なんて、言ってもいいものかどうか。

判断がつかなくて、ぎゅっと拳を握る。

「真朝、時間があるなら、一度こっちに帰ってくればいい。
 須藤さん、忙しいんだろう?」

お父さんが助け舟を出してくれた。
でなければ私は、ケータイ電話を握り締めたまま、石になってしまうところだったわ。

「うん……。
 じゃあ、今からそっちに向かうね」

じゃあ後で、と、電話を切る。

実家に戻るなら、タクシーですぐだし、きっと安全だわ。
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