Sweet Lover
「――お願い、響哉さん。
 分かって――」

涙を堪えて搾り出す声は、三日月の月光のように淡く儚い。

「分かって欲しいのは、こっちの方だよ」

響哉さんは半ば強引に私の顎を持ち上げながら、顔を覗き込む。

だから、見たくなかったのに。
私のことが、心配で不安で堪らないという彼の表情なんて――。

私は、誰かに心配させたり、迷惑をかけたりするのは嫌なの。


成分の100パーセントが優しさで出来ているその視線から逃れたくて、ぎゅっと瞳を閉じる。
溜まっていた涙が、目尻から落ちていく。

響哉さんの唇が、涙を止めるかのように頬に触れた。

「どうして、俺に心配させてくれないの?
 迷惑かけてくれないの?
 嫌われるとでも思ってる?」

一際、ゆっくり発声される声は、別段私のことを非難なんてしてなかった。

ただ、淋しくて溜まらないと、その声音は告げていた。
< 700 / 746 >

この作品をシェア

pagetop