Sweet Lover
「一つなんてけちなこと言わずに、たくさんお願いしてくれていいのに」

私の話を聞き終わった響哉さんは、にこりと笑ってそう言った。

それから、
「いいよ。
 時間と場所、打ち合わせておくね」

と言うと、電池が切れたロボットのように瞳を閉じて、動かなくなった。

私もつられて瞳を閉じた。


翌日は、一緒に会場に入って、そっと後ろから響哉さんが出ている映画を見せてもらうことにした。

――その、翌日も。


スクリーン越しに見る響哉さんは、響哉さんで居て、そうではなかった。

キャラクターはまるで別人。
でも、どんな役を演じても、その人に成り切っていて――。

不意に響哉さんを遠くに感じて、私は何度も何度も、あれはフィクションだと自分に言い聞かせないといけないほどだった。
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