砂の鎖
「別に嫌われてるとは思ってないし、すぐには無理でも好きにさせる。亜澄の気持ちが今俺に無いのは分かってるんだ。都合いいだろ? それでも俺と付き合えない理由は?」

「それは……」


唐突に見せたいつもとは違う真人に私は狼狽し、言葉が喉に引っかかってでてこない。
まくしたてられるように言われた言葉が上手く頭に入ってこない。
答えられない私に、真人はふっと視線を逸らし髪をかき上げながら溜息を漏らした。


「言えるわけ、無いか……」

「え……」


それに、ぞくりと腹の底から寒さが沸き上がる。
再び私に視線を合わせた真人から、目が離せない。


これではまるで、蛇に睨まれた蛙だ。

こんな真人を、私は知らない……


「亜澄がこないだ図書室で読んでた本」

「……真人?」


それから真人が薄く笑んだまま唐突な話題をその唇から零した。


「気になって見てみたんだ」


その瞬間、急速に熱が奪われたのを感じた。
その癖、脈拍は一気に上昇する。


「1個所だけ開き癖が付いてた。あんな本開くやつうちの学校に他にいないだろうな……」


思わせぶりな真人の発言に、私は冷たくなった指先を握りしめて、真人を睨み返した。


「……真人、何が言いたいの?」


そんな私に真人も怯むこと一つせず私をじっと見る。
何もかも、知っていると言いたげに……
彼の視線は、私の取り繕った心の底をさらうかのようで……
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