LOVE SICK
「……来客なんて……今日は無い筈なんですけど……」


忙しさに感けて約束を忘れてしまっていたのかな……
そうも考えるけれど、先ほどスケジュールの調整を済ませたばかりだからそれも無いと思うのに……


「近く迄来たから挨拶にって言ってたわよ」


山内さんの返答は私のミスでは無いと安心させてくれる筈の言葉なのに、私は思わず眉を顰めてしまった。
この忙しい時に……というのが本音。


「誰です?」

「行けば分かるからぁ」


やたらと機嫌のいい山内さんの言葉は軽く鼻歌交じり。
いつもの華やかさが今日は更に増している。

そんな彼女を私はまじまじと見つめた。
この人私より10歳くらい年上なのに……本当に肌が綺麗。肌だけじゃないけど。

私生活が満たされていると女性ホルモンの働きが活発になるってよく言うし。

元々の顔のつくり、土台が違うのにこんな仕事を詰め込んだ生活をして肌の手入れも怠っている私とは全く違う。

……元々の土台が違うから、幸せになれる土台も違うのかな……
一瞬考えてしまったあまりに卑屈な考えに私は一度頭を振って腰を上げた。


軽く書類を整えてから山内さんと並んで打合せブースに向かって歩き出せば、上機嫌でいつも以上の華やかさを振りまく彼女を目で追ってしまう男性社員がいつもより多くい事に気が付いた。

……誰かは分からないけど今日の挨拶に立ち寄ったお客様は、私じゃ無くて山内さんに会いたくて来たのかもしれない。
実際、そういう男性の担当者は結構いる。
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