LOVE SICK
「……柏原さん……辞めて下さい。職場です」


訳が分からなくなって泣き出しそうで……
ただこの状況から逃げ出したくなって、その腕を振り払おうとすれば逆に更に力を入れられた。

まるで『逃がさない』とでも言うように……

その行為にはいつもの優しさは微塵も無くて。
寧ろいつも余裕な彼に必死さが垣間見得て。

余計にどうしたらいいのか分からなくなった。


「るうが朝も来なくなって、電話にも出なくなったからだろ? 俺だってこんな事したくない」

「……」


そんな、傷付いた瞳で私を見るのはずるい人だ……
そんな、優し気な事を言うのはずるい人だ……

最後に私を選んでくれないなら、そんな事はしないで欲しいと思うのに……

これ以上、私の中に踏み込まないて欲しいと思うのに……


そう思っている筈なのに、この人を目の前にして込み上げるのは罪悪感だ。


何も言えずに無言で俯いてしまった私に、彼もただ静かに私を見つめるだけだ。
気まずい、沈黙が流れた。


「……るう」


その沈黙を破ったのは、祐さん。
短く小さく落とされたその響きに性懲りも無く心を揺さぶられる私は、どうしようも無い。

どうしようも無く、ただ泣きそうになる。
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