LOVE SICK
そう思っても、思い出すのは綺麗な色のあの瞳で。

優しく私を呼ぶあの声で。

柔らかく少し癖のある髪で。

優しく触れてくれるその唇で。


笑い上戸で一度笑い出すと涙が出る程笑っちゃうようなところ。

意外とイタズラ好きで私をからかう少し意地悪なところ。

凝り性でパスタの麺まで手作りしちゃうようなところ。



記憶は優しさばかりが満ちていて……



今更に、愛おしくて堪らない。



何も無かった事になんてしたくない私は、やっぱりあの頃よりも幸せなんだろうか。



あの人がいると、私の瞳はまるで綺麗な花に止まる蝶みたいに自然に吸い寄せられる。

あのダークブラウンの髪を見るのも最後になるのかもしれない。

それなら、見つけたく無かったなんて思いながら当然の様に見つければ、彼は私の視線を感じたのだろうか。

呼び掛ける前に振り向いた。


その視線だけで、指先が震える……



言葉を交わす前は一人掛けのカウンター席を好んでいた私達は、気が付けば二人掛けのテーブル席に座る様になっていた。

喫煙席で紫煙に燻られていた私達は、あの日を境に禁煙席に座り続けていた。


変わったのは、私だけだっただろうか。


私は祐さんに確かに救われた。
祐さんに出会えなければ、きっと私は今も斎木さんを思って泣いていた。
傷付いていた私を優しく癒してくれた人。


彼にも私の存在が……僅かでもいい、何か変化をもたらしていたらと、思う。
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