LOVE SICK
「るう。子供がいるのは事実だ。けど嘘は吐いてない」


静かに、それでも意思を持つ彼の声が響いた。


「なに、それ……」


けれど私にはその言葉の意味が分からなくて、何を返せばいいのかも分からなかった。



私があの日見た光景が勘違いだったなんてある筈はない。

少女が躊躇いなく駆け寄った時の幸せそうな笑顔も。
祐さんのが彼女を抱き上げて見つめた慈愛に満ちた瞳も。

嘘だったなんて私には思えない。


それでも、今の祐さんは、とても哀しそうで……
今の彼の瞳も嘘だと思えないのは、私の自惚れなんだろうか。


暫く絡ませたままだった視線を、彼が、逸らした。
そうして、少し力無く言葉を零した。


「……随分前に、離婚してるんだ」

「え……?」


それは、私が想像していなかった言葉。
あの日の彼はとても幸せそうで、あの日の少女もとても嬉しそうで。

そんな憂いや哀しみを、微塵も感じさせなかったから……

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