LOVE SICK
「るうが見たのは、間違いなく俺の子供だ」

「……」

「けど今は結婚もしてないし。恋人もいない。それは事実。黙っていたのは悪かった。けど、嘘は吐いてないよ……」

「じゃあ、でも……なんで……結婚しないって……」


私は必死で言葉を投げかけるけれど、空回りしている気がして仕方が無い。
上滑りりしている気がして仕方が無い。

自分の気持ちにも、祐さんの想いにも、敵う言葉である気がしない……

そんなあさはかにしか聴こえない私の言葉に、祐さんは自嘲気味に少しだけ口角を上げた。


「彼女の、浮気で別れたんだ。子供もいたのにな……」

「……」

「今も養育費を払ってる。そういう約束だから」

「どうして……」


祐さんから見たら私はどれだけ子供に見えるだろうか。
実際一回りも年下の私は彼には幼く見えただろう。

それでもその話の矛盾に気がつかない程にバカじゃない。

彼女の浮気が原因で離婚をして、親権は彼女にあって、それで彼が養育費を払っている。

普通に考えれば彼女の慰謝料と祐さんが支払う養育費で相殺だ。
相殺できなかったとしても、祐さんが負担になる程の額にはならない筈だ。

彼女が祐さんを傷付けて別れたのなら、どうしてこの人がそんな約束を守らなければいけないの?
そんなバカな話はないじゃないかと思い彼を見れば、真剣なその表情に何も言えなくなった。


「あの子は、俺の子供だ。娘を愛してるんだ」

「……」


そう言い切った彼に、揺らぎは見られない。


「俺たちの身勝手で、あの子は傷ついたんだ」


理屈じゃないんだ。
そんな簡単にお金で割り切れる話ではないんだ。

そうだ。私はあの日確かに目にした。

彼は、本当に優しい瞳で少女を見つめていた。

何も知らない私でも一目で分かった。


『少女はこの男性に愛されている』
< 142 / 233 >

この作品をシェア

pagetop