LOVE SICK
それから私の顔を見て首を傾げる田嶋くん。


「川井さん、……何かいいことあった?」

「え?」

「なんか穏やかな顔してる」


そう言った田嶋くんに、斎木さんは少し面白く無さそうな顔をして、私は思わず苦笑した。


「別に、忙しいしむしろ疲れてるくらいだよ?」

「ふーん……取り越し苦労だったかな……」


パソコンに視線を戻してぽつりと言った田嶋君に私は首をひねって、けれど田嶋くんはこっちの話と言いながらキーボードをたたき出した。

田嶋くんがわざわざこんな時間に事務所に寄ったのはきっと気になる仕事があったから。
けれどメールを確認したら大したことは無かったという事だろうか。

そうならわざわざ深夜に戻ってきた田嶋くんには気の毒だけど、私にとってはありがたいタイミングだった。


別にいい事があった訳じゃない。

未だに二人きりになると私を女扱いしようとする斎木さんはちょっと困る。
やっぱりできるだけ二人にはなりたくない。

それでも、斎木さんの目を見て心から幸せを願えたことは嬉しい。

自分の気持ちに気が付けたことは嬉しい。


そして、私を大切にしてくれていた人の存在に……

身動きが取れずにいた私のするべきことに……

気が付けたことは嬉しい。



私はずっと、愛されたくて、一番に思われたくて、幸せを手に入れたくてもがき苦しんでいた。


けど、そうじゃない。
私が本当に求めていたものはそうじゃないんだ。

大切な物は、それじゃない。


祐さんに別れを告げられたあの日、すぐには出なかった答えが見つかった様な気がした……



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