LOVE SICK
因みに俺は、川井さんと仲は良い方だと思ってはいるし、彼女に好感を持っている。
けれど恋心は抱いていない。

何も無ければ彼女を好きになってもおかしくは無かったとも思うし、好きになるかもしれない、と思ったことも無くはない。


「斎木さんって理不尽だって時もあるけど嫌いになれないんだよな……かっこいいよな。あの人」

「分かる。私、斎木さんに誘われてこの会社きたんだ」

「そうなの?」

「斎木さん、前職に出入りしてた営業だったの。ムカつく時も多いけどかっこいいよね」

「惚れた?」

「もう! 田嶋くんが言い出したんでしょ! そういう意味じゃなくて……」


俺が彼女に恋をしなかった理由は簡単だ。
俺のちょっとしたからかいに、少し顔を赤くしてムキになった彼女にすぐ“そういう意味”だと気が付いたからだ。


「川井。お前一応女子だし、送ってやるよ。あと五分で仕事片付けろ」

「え。ほんとですか?」


車通勤の斎木さんは川井さんが残業をしているとそう言って度々彼女を家まで送っていたし、川井さんも声を掛けられることを期待して残業をしている節もあった。
嬉しそうな彼女にそんなに分かりやすくて大丈夫かと、心配になった程だった。

面倒ないざこざが好きでは無い俺は、川井さんを好きになるのはすぐにやめることにした。
止められる程度の“好きかも”だったというだけの話。

……あと、今付き合っている年上の可愛い彼女と出会ってしまったというのも大きな理由。


とにかく、俺は川井さんに恋愛感情は抱いていない。
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