LOVE SICK
「田嶋くん気が付いてなかったの? ホント田嶋くんって素直っていうかなんていうか……呑気だよね」


呆れ顔の川井さんにそう教えてもらった。


「田嶋君さ、もしかして利用されたとか思ってる?」

「俺そこまでガキじゃない」

「そう? なら良かった」


少しムッとしたのは気が付かなかった自分に対してだ。
あと、川井さんのバカにするような視線に対して。


その後、俺と川井さんは何かがあってもなくても度々斎木さんに飲みにつれだされ可愛がってもらっていた。
だから斎木さんへの印象は上々だった俺は斎木さんのやり方にムッとしたわけじゃない。

斎木さんは、厳しいが俺たちをすごくかわいがってくれている事を俺は知っていた。
だからあの人が上から認められる為に役立ったのなら喜ばしい事だ。
学生気分が抜けていなくてまだ役立たずだった筈の俺を上手く仕えたのは間違いなくあの人の手腕だ。

それくらいの心意気は俺にだってある。

ただ、新入社員の当時に聞いていたら腹立てていたかもしれないのは事実だけれど……


とにかく、川井さんに教えてもらったその時は、斎木さんが正直で目下の人間をとても大切にする人だということをそれまでの斎木さんとのかかわりで俺はよく分かっていた。


……ただ、仕事に関しては、という但し書きがつくけれど。
< 183 / 233 >

この作品をシェア

pagetop