LOVE SICK
ほんの小さく聞こえた声は、聞き間違いだったのかもしれない。
そう思って問い返した瞬間、ヘッドライトの光に包まれて私たちの横に白い車が停車した。


「るう!」


聞き慣れたバリトンの響きに、私は思わず思い切り掴まれていた腕を振り払った。
車から降りてきたのは私を迎えに来てくれた祐さん。
少し焦った様な、怖い顔をしていた。


……見られてたんだ……
いや、ちょっと腕を掴まれただけで、他には何もないし……
強引に振り払う方が今のは怪しかったのかも……
でも、本当に私やましい気持ちなんてないし……
いや、でも……

焦る私が狼狽しているとサッと立ち上がり祐さんに近づいていったのは斎木さんだった。
いつの間にか朗らかな営業用の笑顔をしっかりと貼りつけている。


「……ああ。川井の恋人って貴方だったんですね」

「貴方は……」


不信気に眉を顰めた祐さんも、斎木さんの紳士的に見える態度に勢いを削がれたようだ。

一瞬前まで酔っぱらって不貞腐れていた斎木さんは笑顔でさっと名刺を出した。
この人の名刺を出す速さはいつでもどこでも尋常じゃない。
あらゆるところに名刺を仕込むテクニックは手品師の域だ。

生粋の営業あがりの我らが支店長。


「ユウ人材クリエートの支店長の斎木です。川井がいつもお世話になっております」


胡散臭いとしか私には思えない斎木さんの笑顔に、祐さんもニコリと穏やかな笑顔を見せた。
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