LOVE SICK
「仕事のつもりではなかったので、名刺を持っていなくてすみません。NOC関東エリアマネージャーの柏原です。斎木支店長、よく存じ上げてますよ」


祐さん……斎木さんの何を存じ上げているんですか……?
私何も言った事無い筈です……

いつもの柔らかな笑顔なのに、何故か含みがあるように感じられてしまうのは……この人と付き合ってた過去を話していない私の後ろ暗さの所為だけですか……?


「そうですか? 御社とのご契約時は私はまだ支店長ではなかったので……ご挨拶に伺おうと思っていたんですよ」

「うちにそちらから来てくれている派遣の女性が噂していますから」


にこりと微笑んで言う祐さんに、斎木さんは肩を竦める仕草をして見せる。


「厳しく言ってますからね、悪く言われてるでしょう」


嘘吐き!
斎木さんそんな殊勝なこと思ってないでしょう!!


「まさか。ユウさんの新しい支店長はいい男だって」

「柏原さんに言われると恐縮ですね。以前我が社にあなたが見えた時は女子社員が騒然としていたんですよ」

「突然お邪魔してすみません。自分の目で見ないと納得できない性分で」

「ああ、よく分かります。私も営業あがりなのでつい現場に口出したくなるんですよ」


そう言って、二人で笑い声をあげた。
よくある、まったく親しくない間柄の二人の、余所余所しく親しげなあの笑い声。


ああ……笑顔のお世辞の押収が……

聞き慣れた社交辞令の押収が……

なんか空怖く感じるんだけど……


二人とも見慣れた笑顔なんだけど……

私にとっては非常に微妙な取り合わせなんですが……
< 223 / 233 >

この作品をシェア

pagetop