LOVE SICK
口が挟めない私は斎木さんの後ろにおとなしくしている。

支店長と一緒に私が担当する取引先の責任者に挨拶をしているのなら、これはとても正しい位置関係。

でも祐さんは私の恋人で、斎木さんは私の多分元カレ。
なんかこの位置関係は微妙な気がする。

いや……でも、今この二人が社交辞令の押収をしている限りはこれが正しい立ち位置?


訳が分からなくなっている私を置いて、斎木さんは笑い声を引っ込めてにこりと優しい笑顔を祐さんに向けた。


「いえ。それにしても川井を迎えにくるのが貴方だとは思いませんでした」


それに私は思わず斎木さんを見上げた。
よく言うよ! 分かってたくせに!
ホントこれだから営業って信じられない!

……私も営業だけど……


けれど親しげな笑みを一変させて、窘める様な視線を私に向けた。
その鋭い視線に捉えられれば、ひやりと背筋に震えが走った。


「まさか、川井が営業先の上役となんて……ね」


さっきは目を瞑るって言ったけど……あれは嘘……?
あれは、私に白状させる為だった?
私もしかして、また勘違いして騙された?

以前の親しい間柄に甘えていたのは斎木さんではなく、私の方、だった……?


斎木さんはまた、笑顔に戻して親しげに祐さんに視線を戻した。
けれど厳しい表情をした祐さんが笑顔に戻ることは無かった。
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