LOVE SICK
「手前味噌ですが、川井は優秀でしょう? 彼女は私がヘッドハンティングした社員で入社当時から目をかけてきたんですよ。個人的にも、親しくしてますし」


そう言って、私の肩に腕を回した斎木さん。


「ちょっと!」


何考えてるのこの人!

もがいて振り払おうとすれば肩を握る手に斎木さんは力を込めて私を引き寄せた。
今度は斎木さんが祐さんを見る目も、社交的な笑顔では無かった。


「なので、私自身は彼女の為にも目を瞑りたいですが……他の社員たちが騒ぎはじめたら、川井はそういう目で見られるんです。そうなった時に私は責任者として彼女を追求しない訳にはいきません。貴方も、管理職ならお分かり頂けますよね」


斎木さんが言う事はもっともで……

後ろめたい事は無くなった筈の関係なのに、私にとって祐さんとの関係は仕事上有益なものでは決してない。

でも、私は祐さんに否定をしてほしい。

救いを求める様に祐さんを見れば、厳しい表情をしていた祐さんがふと穏やかに表情を緩めた。


「ええ。よく分かります」

「祐さん……」


そんな彼の表情に、私は泣きそうになる。

祐さん。それって、どういう意味……?

仕事は大事。今楽しいとも思ってる。
祐さんが私の顧客の責任者である以上、闇雲に言いふらしていい事じゃないのは分かってる。

でも、私は……祐さんが大事なんです。
貴方の手をもう、放したくなんてないんです……

それなのに……
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