LOVE SICK
「斎木さん、堅苦しい話は今日はやめましょう。上手く立ち回りますし彼女を傷つける気もありません」


呆気にとられた斎木さんが、そして私が、動けずにいると分かると彼は私たちにつかつかと近づいてきた。

そのまま、斎木さんに肩を抱かれていた私を強引に引っ張り、気を取られていた斎木さんの腕から私は簡単に解放される。


「それにもう夜も遅い」


祐さんは後ろから私を抱き締める様に腕を回し、私の耳元で甘い囁きを響かせる。
祐さんがどんな顔をしているのかは見えなかった。


「お互い、大切な女性との時間を楽しみたいでしょう?」


それでも、耳元で響いたバリトンの声色が、私の脳髄を刺激する……
理性を麻痺させる……

どうしよう。頭が、くらくらする……
立っていられなくなりそうだ……


「じゃあ、失礼します。るう。乗って」

「は……はい」


祐さんに背中を押され、よろよろとした足取りで私は助手席に乗りこんだ。

動揺した私が、支店長に挨拶すらせずに恋人の車に乗ってしまったのに気が付いたのは、祐さんが車を発進させた時だった。


思わず後ろを振り向けば、斎木さんが呆然とした顔をしているのが見えた。


……私は、恐ろしい事実に気が付いてしまった……

斎木さんよりも、祐さんの方が食わせ物だ……
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