LOVE SICK
「あの男、るうの以前の恋人?」

「……」


二人の間に、つうっと透明な、深いキスの名残が零れ、私の口紅が移った彼が唇を親指で拭う仕草に、欲情した。
今すぐこの人を、めちゃくちゃに抱きしめたい……

祐さんは私の答えを待たずに眉を垂らした。


「……悪い。職場のことだ……それに俺も、人の事言えないのにな……」

「祐さん……」

「今のは聞かなかった事にして」


ずるい……
あんな風に嫉妬を見せつけて、こんな情熱的なキスをして、それからそんな弱った顔をして見せるなんて。
本当にずるい。

信号が変わり、祐さんは私から身を離してアクセルを踏み込んだ。
私の方を、見もしない。
少し、きまずそうな顔……

悪い事をしてしまった子供みたい。
ちょっとふて腐れたような顔。


ああ……もう。
本当にずるい。


好きなの。
すごく愛おしいの。貴方が。
もっと私を求めてよ。もっと欲張ってよ。


「結婚して下さい……」


そんな想いが、口から零れれば別の言葉に変わった。
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