LOVE SICK
***

そんな、とんでもない大失敗を犯した次の朝。
少しだけ気合を入れていつものカフェに向かう。

いつもより、緩い巻髪は上手くいった。

メイクだって……昨夜はあまり寝られなかったから……ノリは悪かった。
けれど、目の下にくっきりと出来たくまは上手く隠せたと思う。

昨日は……寝付けなかった。

まず、あのメールにはなんの返事もできなかった。
どうしようかと考えてる内に時間は過ぎてしまって。

『何かあれば』の何かとはなんだろう……と、改めて考えるとよく分からない。
『何かあった』から彼は私に連絡先を置いてった訳で……

その上これ以上の『何か』なんて言えば……


(子供ができたとか……?)


そんな『何か』が無ければ連絡してくるな、という意味だろうかとも思えてきた。

そもそも朝までいなかった理由だって、普通に考えれば家庭がある人だったんじゃないだろうか。
結婚指輪をしていた覚えはないけれど、おそらくあの人は三十代。
あんな素敵で優しそうな男性が独身でいることはないだろう。


(最悪……不倫なんてしたくないのに……)


そうだとすれば最悪だけれども、向こうだって遊びだろう。
お酒の所為で羽目を外しすぎてしまっただけ。一夜限りのつもりの筈だろう。

それなら連絡をするのは迷惑だろう。

家族と居る所にアルコールに負けてうっかり関係を持ってしまった知らない女から連絡が来るなんて……
想像すると辛すぎる……

私だって、そのつもりだ。

けれどそれなら、連絡先を置いて行くなんて危ない事するべきじゃ無いと思う。


これはどういう場合に連絡をすればいいんだろうか……


そんな事をぐだぐだと考えていたら遅くなり、メールを返すタイミングを失った。
< 35 / 233 >

この作品をシェア

pagetop