LOVE SICK
***


「今度こそ、受け取って下さい」

「その金で豪遊すればいいだろ?」

「ダメです」

「頑なだな……るうは……」


その言葉にドキリと心臓が少しだけ締め付けられた。
柏原さんは、いつの間にか当然の様に私の名前を呼んでいる。
本当に、この人の声は無駄に色っぽくて……
その度にいちいち動悸が逸る。

今日はカフェには入らずに、柏原さんは店の外で私を待ってくれていた。


「とりあえず、受け取るよ……」


溜息を吐きながら渋々三枚の諭吉さんをやっと受け取ってくれたことで、私の気がかりは少しだけ晴れた。
それから、私を流すように捕まえる視線にまた少し、頬が赤くなってしまう。


「じゃあ、飲みに行く? 夕食まだなんだろ?」


たったそれだけの言葉に私は無関係にドキドキしてしまうんだから……
顔が良い人はこれだからずるい。


「……昨日、私出しましたか? 覚えてなくて……」

「……さあ?」


うそぶく様に明後日の方を見る彼を、今度こそしっかりと睨む。


「もう! どうして出させてくれないんですか……ジャケットのお詫びなのに……じゃあ今晩くらい出させて下さい」

「……若い女の子に金払わせるとか……嫌なんだけど」

「だって……」


そうは言っても、私だって迷惑掛けっぱなしでご飯迄奢ってもらってそのままで……だなんて。
恋人でもなんでも無いのに嫌だ。
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