LOVE SICK
「結婚しない主義ですか?」


そうして会話を元の所に戻してみる。


「そうだね。結婚はしてないし、する気もない。どうして?」

「柏原さん、モテそうなのに、信じられなくて……」

「男も40が見えてくるとモテないよ」


なんて、涼しい顔で言ってるけどそんなのは絶対に嘘だ。

綺麗なテーブルマナーで肉を一切れ口へと運ぶ彼をチラチラとさっきから何人かの女性や店員が見ているのに私は気が付いてる。
それらをみない様に気をつけながら、私はワイングラスを傾けた。


「だから、こうして食事を誰かとするのは久しぶりで、悪くないな……」


その声に、グラスワインに集中していた私は顔を上げる。
そして一息、空気を飲み込んだ。

……適した返答が、分からなくて……

私を見つめてニコリと微笑んで言われれば、どうせ社交辞令だと思えたんだろう。
何も考えずに適当な返事をして、そうして会話は盛り上がるだろう。

けれど彼は少しだけ遠くを見つめていて……
少し、寂し気に見えた。


「……私もです……」


躊躇ってしまった私が零した言葉はたったそれだけで。

どうしてか、泣きたくなってしまった……

彼は何の意図もしていないのだろう。
お互い深くは知らない相手だ。

それでもこの人は、何故か私の心の柔らかい部分にそっと触れるんだ。
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