LOVE SICK
店を出て、無言の彼に着いてタクシーに乗り込んだ。


「うちでいい?」


今更念押しなんてしないで欲しい。
そう思い窓の外を見て無視をすれば、彼の腕に頭ごと絡め取られた。

心臓の音が、煩い。

こんな距離じゃ、気付かれてしまうんじゃないか心配で……
けど、この熱を拒みたくもなくて……

そっと体重をかけようとした身体が少し強張っていて。
思いの外緊張してる自分に気が付いた。

住所を告げられたタクシーの運転手さんは、鬱陶しいカップルを乗せてしまったと思っただろうか。
それともこんな事ぐらい、慣れっこだろうか。

ずっと、彼が何処から来ているのかなんて知らなかった。
彼の腕の中でぼんやりと外を眺めながらこの辺りなら、朝は東西線だろうかとか。
どうでもいい事ばかりが頭に浮かぶ。

今日は、お酒の所為にしてしまうには飲み足りなかったな……なんて、訳の分からない後悔が脳裏を掠めたりもした。
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