LOVE SICK
連れて来られたのは高層マンションの一室だった。

モノトーンに纏められた彼の部屋はモデルルームかのように整えられていて、本当にここで生活をしているのかと疑いたくなる程に生活感が無さすぎる。
玄関から見える扉がいくつもあって、私が住んでいる1DKのアパートよりも明らかに部屋数は多いだろうことは一見して分かった。一人で暮らすには広過ぎるんじゃないだろうか。

玄関を開けた途端人感センサーで点いた照明に照らされて浮かび上がったその室内をぼんやり眺めてそんなことを考えていれば、いきなり腕を強引に引かれた。

腰に周って私の自由を奪う右手と、私の顔を上を向かせ固定する左手。
少し強引に、まだ靴も脱いでいないのに、身体を玄関の壁に押し付けられた。
そして唇に落とされたのは獣の様なキス。


「ん……っ」


重ねられたそこから侵入する熱い舌に少しだけ驚いた。
けれど拒む理由も特には思い付かなくて……

絡め取られた舌に酔わされ応える迄には殆ど時間なんて掛からなかったと思う。

官能的な水音に混ざって、多分冷蔵庫のブーンという機械音が妙に耳についた。
そんな風に何処か理性を手放せずにいる自分を無視して、彼の首に、手を延ばした。
< 58 / 233 >

この作品をシェア

pagetop