LOVE SICK
「祐……さん?」


少しだけ離れた距離で、見つめる彼の瞳に心がざわつく。
少しだけ乱れたその息遣いに、気が狂いそうだ。


「悪い……余裕なさ過ぎだ……」


けれど苦笑しながらそう零した彼に少しだけ笑みが零れた。
余裕が無いのは、多分私の方。

彼の首筋に廻した腕に更に力を込めて、その唇をそっと奪えば少し驚いただろう。
それでも、さっき迄とは違う優しい丁寧なキスが落ちてくる。

けれど次の瞬間。
フワリと身体が宙に浮いた。


「……え?」


片手で子供の様に抱きかかえられて、もう片方の手で丁寧に靴を脱がされて、そのまま奥へ足を進める彼。


「祐さん?あの……私自分で……」

「シャワー、後でいい?」


そう言って、柔らかい場所に降ろされる。
それが、シングルのベッドだと気が付くのは一瞬。

扱いは壊れ物の様に優しいのに、逃がす気は無いとでも言う様に、しっかりと自由が奪われている私の身体。

逃げる気なんて無いのに……


「祐さん……」

「るう……」


そっと身体を倒されて、上から見つめられれば、込み上げるこの感情は一体なんなんだろう……
もどかしいような、切ないような、哀しいような……
少なくとも、愛情では無い筈だ。

それでも落ちて来た、優しいキスに応える事が全ての答えになるだろう。
それが、私の感情を伝える最も適した手段だ。


「ん……あっ」


その指先に、翻弄されてる振りをする事が、肯定と同じだろう。


「あ……っや、んっ……」

「るう。我慢、しないで……?」


そう思ったのに、その声に、熱に、視線に。
あっという間に酔わされて、崩されて……


僅かに残したつもりの理性を完全に手放してしまう迄の時間なんて、多分ほんの僅かだったに違いない……
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