LOVE SICK
「祐さん……」

「なに?」


暗転した世界の中でぼんやりとその心地よさに甘んじながら、彼は本当は、誰にこれをしてあげたいのだろう、と思った。
誰を、こんなにも大切に扱いたいのだろう。


「何でも、無いです……」


大切に出来なかった誰かが居るのかもしれない……
だから、ずっと一人でいるんだろうか。
それでも時々一人でいるのが寂しくて、こうして行きずりの誘惑に流されてみたりするのだろうか……

それならこの人と私は同類だ。
けどそんな事、知り合ったばかりの私が聞くのは踏み込み過ぎだ。

当たり前の様に髪の毛を乾かしてくれる彼は美容師かと疑いたくなる程に手馴れていて、女慣れしていない。とかは到底思えない。
私の少しセンチメンタルな考えとは裏腹に遊びまくっている可能性だってあるだろう。


「るう。電気、全部消していい?」


一昨日初めて喋った人と、同じベッドに潜り込む。


「……子供じゃないですよ……」


そう言えば、楽しそうに笑われた。


「リモコンここに置いてあるから。夜起きる時は気をつけて?」


どこまでも子供扱いする彼に不貞腐れた顔をした。
それでも、抱き締めてくれる温もりに何故か酷く安心をして……


「……明日は、朝迄居てくれますか?」


そんな、甘える様な言葉を零したのは私。


「ここは俺の家だよ?分かってる?」


そんな甘いセリフに、深い眠りに落ちた……
昨日迄、名前も知らなかったその人の腕の中で。
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