桜吹雪~運命~





「…良いんですか?」

「怪我人を追いだすほど、わしは悪くない」

「…ありがとうございます!」



遠矢くん…良かったね。



「安心せぇ。
この海鳴村は、三神村の奴など来ない。
平和な村じゃよ」

「そのようですね…」

「食費のことも心配するな。
この小町が、お前さんの分まで働いてくれる」



ニヤァ~ッと悪魔の笑みを浮かべるばぁちゃん。

…まぁ“働かざる者食うべからず”をモットーに掲げるばぁちゃんだけど、怪我人を働かせるわけにはいかないでしょうね。

こりゃ、文句は言えない…。




「そんな…悪いですよ。
別に僕、怪我はしていますけど、働けないわけではないです。
事実、この足で山を乗り越えてきましたから」

「心配せんで良いぞ」

「小町さん女の子ですし…」

「小町は男以上に男らしいぞ」



ばぁちゃん…。

そんな嘘をペラペラと話さないでよ……。




「良いんですか…?小町さん」

「…ッ」



可愛らしい黒目に見つめられ、あたしはドキッとした。



「大丈夫。
あたしに任せて。
遠矢くんは、大人しく怪我の治療をして?」



内心冷や汗をかきながら、あたしは笑った。







< 32 / 137 >

この作品をシェア

pagetop