甘い言葉で


「すみません、すぐ終わりますので。ちょっとだけタローちゃんを借ります」


そう言ってタローを少し離れたところへ連れていった。
なんだ?告白か?
ちょっと気になるから聞いてみるか。



「あのさ、タローちゃん。私が小学生の時、あゆみと団地の近くで遊んでいたんだけど......その時、あゆみがいじめっていうかからかわれた事があって、タローちゃん達が助けてくれたこと......覚えてる?」


「ん?俺たちが助けた?」


「うん。確か、タローちゃんの友達があゆみのコト助けてくれたよね?わたし、その人が震えてるあゆみを抱きしめてた記憶があるんだよね~。で、その友達が誰だったか覚えてる?」


サチが言い終えると、タローの視線が俺に向けられた。
そして、ニヤリとしたのがわかった。


「で、今さらなに?そのあゆみちゃんとやらは、俺の友達に会いたいわけ?」


「ん~。どうなんだろう?ここに来るまでのバスの中で寝ててさ。その時に見た夢があのときの事だったの。助けてくれたお兄さんが誰だか覚えてないんだけど.........忘れていた記憶が今甦ってきたんだよ?もしかしたら、そのお兄さんと恋に落ちる運命かもしれないじゃん?」


「ほう。少女チックな考えだね。そんなに知りたい?その俺の友達」


タローの視線は俺に向けられてる。
.........俺?


ちょいと待て、ん?
あの子達が小学生のころ?
タローんちの団地で遊んでた女の子2人?
いじめっ子から助けた?
タローの友達............俺?


あのとき、変なヤローからあゆみちゃんを助けたのは............俺?


通りで、バスに乗る前にぶつかったとき、あの顔に見覚えがあると思ったんだよ。
って、助けてあげたこと俺は今日まで忘れてたんだけど?
タローの記憶力半端ねーな。


< 24 / 101 >

この作品をシェア

pagetop