重ねた嘘、募る思い
「話、続けて平気?」
苦笑いの陽さんが優しく頭を撫でてくれるから、何度もうなずき返してた。
聞きたいと乞うたのは自分なのに。申し訳ない気持ちになる。
「でね、死んだ父親に言われてたんだ。僕は寝言で、特に体調の悪い時につぶやく言葉があるって」
「つぶやく?」
「うん、『母さん』って」
――母さん。
それはきっと母親の愛情を求めた陽さんが寂しさのあまりに紡ぎだしてしまった言葉だろう。
悲しくてまた涙がこみ上げてくる。
自分は両親健在で、周りから真麻と比較されながら育ってきていても幸せだったはず。
陽さんに比べたら、ずっとずっと。
恥ずかしそうに陽さんが片手で額の辺りを覆い、真っ赤な顔を隠すようにして俯いている。
「のん、気づいた?」
今度は身を乗り出してきた真麻がわたしの頭を撫でた。
「陽がつぶやいたのは、『まあさ』じゃなくて『かあさん』、のんの聞き間違い」
「えぇっ!」
そう言われてみれば、はっきり『まあさ』と聞こえたわけではない。
『あさ』って聞こえたから、絶対『まあさ』だと思い込んでしまっていただけ。