重ねた嘘、募る思い
そのままその場で自己紹介めいたものが続き、いざ入口に向かう時。
「うわー両手に花だ」
うれしそうに顔を綻ばせる陽さんを見て、わたしは心の中でつぶやいた。
両手じゃないよ、片手だよ。もう片方は雑草以下だよ。それはもちろんわたしだよ。
「じゃ、陽。今日一日私達のエスコートを頼むわよ。のんは足を怪我してるから荷物持ってあげて」
「はっ! 畏まりましたっ。真麻さまっ」
ちょ、何いきなり女王様ぶってるの? しかも何でわたしの荷物?
敬礼をしてみせた陽さんの手がこっちに伸びてきて、わたしは首を横に振りながらトートバッグの肩紐をぐっと握りしめた。
陽さんはわたし達より三つ年上の二十五歳と言っていた。そんな彼が真麻に敬語を使うのもなんだか変な感じがした。しかも真麻はすでに呼び捨てにしているし。
「荷物、持つから」
「いっ! いいですっ」
「だって真麻さまの命令には従わないと」
「従わなくていいですっ。大丈夫ですっ」
後ずさりするわたしを見て陽さんが楽しそうに笑う。
「そんな遠慮しないでよ。ノブちゃん。さっきから重そうだと思ってたんだよね」
首を横に振り続けながら後ずさるととうとう正門にぶつかった。
荷物を持ってもらうなんて慣れてないから。真麻にとっては普通のことかもしれないけどわたしには無理無理っ。